« フェルマーの最終定理 | トップページ | 21世紀の難問 »

2011年8月14日 (日)

暗号解読

サイモン・シンは難しい科学のテーマを一般の人にもわかりやすく解説することで定評があります。彼が書いた3部作『フェルマーの最終定理』『宇宙創成』『暗号解読』(いずれも新潮文庫)はどれもすばらしいです。

今日は『暗号解読』を紹介します。暗号といえばかつては戦時中に本国と前線とでやりとりするものと相場がきまっていたのですが、現代では銀行のATMやネット・ショッピングのクレジット決済など、私たちの身近なところでも使われています。

暗号を作るときにも、それを読むときにも「鍵」が必要です。これまで暗号のやりとりで一番悩まされたのがこの「鍵」受け渡しです。第二次大戦で日本軍の「鍵」が米国の手に渡っていて、暗号がことごとく解読されていて、それが戦争の敗因のひとつでした。

ところが1975年にディフィーらが「鍵を受け渡ししないで、暗号をやりとりできる方法」として「公開鍵」というアイデアを発表しました。その2年後にはリヴェストらが公開鍵を使ったRSA暗号の開発に成功しました。

それは2つの素数を使った暗号でした。素数とは自分自身と1以外では割り切れない数のことです。小さい方から2、3、5、7、11、13・・・と延々と続きます。暗号の原理はこうです。

暗号を受け渡したいAさんは公開鍵としてたとえば11と13を掛け合わせた「143」を設定してこれを公表します。Aさんに暗号文を渡したいBさんは、この「143」を使って暗号文を作り、Aさんに送ります。

その暗号文を受け取ったAさんは「143」の元の素数である「11」と「13」を使ってこの暗号文を解読します。

さて、この暗号文を傍受したCさんは、どうやってこの暗号を解読するのでしょうか。公開鍵の143では、この暗号文を元に戻すことはできません。あくまで11と13が必要です。143ならば簡単に因数分解して11と13を得ることができますので、おそらくCさんは暗号の解読に成功することでしょう。

では、公開鍵が10の300乗にもなる素数どおしを掛け合わせたものならばどうなるでしょうか。Cさんは世界中のコンピュータを使っても掛け合わせたもとの2つ素数を見つけるのに1000年以上もかかってしまいます。それは事実上不可能です。

こうして、「鍵の受け渡し」という有史以来、暗号利用者を悩ませていた問題が解決したのです。暗号の鍵は公開されているにもかかわらず、巨大な数の因数分解が困難であるという理由により、暗号の解読は事実上不可能なのです。

|

« フェルマーの最終定理 | トップページ | 21世紀の難問 »

ほん」カテゴリの記事

科学・インターネット」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/557951/52470944

この記事へのトラックバック一覧です: 暗号解読:

« フェルマーの最終定理 | トップページ | 21世紀の難問 »